「本物のダシを味わうことは教養である」

京大と日本料理アカデミーが主催して毎年やっているプログラムで、ダシのことを知ってダシを味わいダシを知るというもの。去年おととしもやってるんだけどバイトで行けなくて今年こそは!と思っていたのでいけてよかった。参加したときは下鴨福助、松廣、清和荘、山ばな平八茶屋、草喰なかひがしの料理人の方が来られてた。2週間ぐらい前だけど、以下まとめ。
 
 
初めの挨拶では日本人が「ダシ離れ」をしているのに、海外ではダシに注目が集まっていることなどに触れたものであった。「ダシ離れ」が進んでるのは多分日本料理の敷居(値段)の高さがあるだろなぁ。それとこの講義の由来について。初めは1回生向けに行われるポケゼミで未来の食戦略を考えるというのがあって、それで料理人さんをお呼びしてダシ体験をしたらそれが好評だったらしい。そこでもっと広くできないかということでこういったプログラムができたらしい。
 
その後ダシ(主に昆布と鰹)についてのプレゼンがあって、ダシの美味しさはグルタミン酸オレイン酸グアニル酸コハク酸のようなうま味成分によるものだとか、昆布には利尻昆布羅臼昆布、日高昆布、山出し昆布があってそれぞれの特性が云々だとかの説明。京都でよく使われているのは礼文島利尻昆布で色がクリアで時間がかかり、大きさ厚みで等級が分かれるんだけど1等と2等で美味しさが違うとのこと。そして礼文島での昆布漁(?)の体験がづらづらと。鰹だしについての説明もあったけど昆布の説明に比べると簡単なのもだった。それと西洋料理の美味しさの対比があって、日本ではダシ(のうま味成分)を使うけど西洋では生クリームやバターなどの油脂を用いるというもの。脂を感知する味蕾があるらしく脂も美味しさを出すものの一つであるけど、それをダシを用いて美味しくすることで脂肪摂取量が減って人類が健康になるのではないかという事を言ってた。実際、製菓とかでも生クリームは大体乳脂肪が多ければ多いほど美味しいし、料理にもバターも入れるのと入れないのでは味にかなりの差が出るし。それをダシで補えれるようになればすごい健康的な食事になるんだろうなぁと思った。
 
1時間弱のプレゼン後にダシの引き方を教えてもらい実際に味わう時間に。利尻昆布は60℃ぐらいのお湯で1時間*1ダシを引き、昆布を取り出し80℃〜90℃のお湯で鰹ダシをひくというもの。実際に鰹ダシを引くところを見せてもらいつつ昆布ダシのみ・合せダシ・合せダシに塩*2を加えたものの味見をした。「鰹が効いている」とよく言われるけど実際はほとんどが昆布ダシの味でそれを鰹ダシが引き立てているの*3がよくわかり、さらに塩により美味しさが増していることに驚いた。調味料はただ素材の味を引き立てるということを実感。そして実演で作ったダシを用いて一人一杯お吸い物を味うことに。具は水菜と湯葉と、もみじのように飾り切りされた柚子。湯葉自体は味が全然無いんだけど、ダシによってこうも美味しくなるのかと感動してまた柚子の風味がうまく調和されていてまた感動して、全体的には優しい味でそれだけでほんわかした。その後は各料理人のところに回って、その方が作ったダシをいっぺんに味わえるという贅沢な時間に。同じ合せだしでも引き方や素材・調理する方によってこんなに違うものだと初めて知った。ある方のダシはえぐみも若干含まれるけどそれも相まって力強い美味しさ、またあるところは最初が鋭くて後味がさらっとした味だったり、すっきりするけどちゃんと厚みがあるような味だったり。回っているときに「ダシにはその料理人の性格が出る」「芸術家は絵で表現するけど、料理人は料理で表現する」とか聞こえたけど、確かに味を通じて何かが伝わるようなのはあるなぁと思った。料理もコミュニケーションの一つなのか。
 
ダシを味わうとすぐにお腹一杯になるから少し残念だったけど、全体的に幸せな時間でした。日本料理を食べてみたくなるけど、お金の問題もあるし、ねぇ。だからこそこういうプログラムがあって、貧乏学生もダシを知ることができていいんだよな。来年もあればまた行きたい。

*1:他の昆布だと20分ぐらいで大丈夫。

*2:醤油を加えるところがほとんどだけど自分が見たところでは塩水だけだった。

*3:相乗効果といふもの。単一のダシより合わさった方が8倍〜20倍美味しくなるらしい。基準は多分味覚センサー。